Octopus's Garden

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りそなの会計士はなぜ死んだのか?

http://www.flickr.com/photos/21994122@N04/3210500740

photo by SamikRC

2003年4月24日。りそなグループの監査を担当していた朝日監査法人(現あずさ監査法人)に勤める男性会計士が都内の自宅マンションの12階から飛び降りてなくなりました。男性は38歳、職位はシニアマネジャーでした。

この「事件」は、経済誌などで大きく取り上げられ、後に「りそなの会計士はなぜ死んだのか」という、事件を題材にした書籍も出版されました。

当時、公認会計士試験の勉強を始めたばかりだった私にとって、この事件はかなり衝撃的だったのを覚えています。

 

 

りそなの会計士はなぜ死んだのか

りそなの会計士はなぜ死んだのか

 

 

りそな銀行監査法人の対立

この事件の発端は、税効果会計をめぐって、りそな銀行の主張と監査法人の主張が対立し、監査法人側は最後まっでりそな銀行の会計処理を認めませんでした。
その結果、自己資本比率が当時銀行に求められていた4%を下回ることになり、りそなの経営破綻に追い込まれました。

りそな側の説明によればこうである。3月期決算において、りそな側は「繰延税金資産」5年分の約7000億円を主張したのに対して、監査を担当した新日本監査法人は3年分の約4300億円しか認めなかった。5年分が認められていれば、りそなHDの自己資本比率は6%で、4%の基準を楽々上回っていた。しかし、監査法人が3年しか認めなかったため、4%を下回る3.78 %となった。       

『りそなの会計士はなぜ死んだのか』/毎日新聞社刊 

その後、りそな銀行を担当していた会計士が自殺していたことがわかり、この自殺をめぐって、多数の憶測が新聞紙面や雑誌に書かれました。

りそな銀監査担当会計士、自殺した理由 38歳の男性が飛び降り…zakzak

監査法人の責任の重さ

あの事件から10年あまり経ち、当時学生だった私も監査法人でシニアとして責任のある仕事を担当するようになりました。

この本を読んで、改めて感じたのは、監査人の責任の重さです。

ある会計処理を巡って、その会計処理を認めなければ、クライアントが窮地に追い込まれるかもしれない。
かと言って、監査人として誤った会計処理を認めるわけにはいかない。そのような場面では、監査法人の出す結論によって、会社の命運が変わってくるわけです。このときに、正しい判断ができるかどうかが監査人としての真価が問われるのだと思います。

会計基準上、白黒がはっきりついたものであれば、葛藤はあったとしても、判断はそう難しくはありません。
しかし、りそなの事件の場合のように、白黒はっきりしていない、当事者の「判断」に依存するような会計処理で、自分の出した結論に100%自信を持てるかどうかと聞かれると、正直今のところ自信がありません。
私が同じ立場でも、どちらを選んだにせよ、自分の出した結論に「本当にこれでよかったのだろうか?」と大いに悩むと思います。

もしかしたら、このりそなの担当会計士は、その重責に耐えられず自殺を測ったのかもしれません。

 この本は、一人の会計士の自殺の真相を追う本であると同時に、監査人とはどうあるべきかを考えさせてくれます。監査法人に勤めている、またはこれから勤めようと考えているすべての方に読んでもらいたい本です。