Octopus's Garden

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新日本監査法人が東芝の監査人を降りない理由

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東芝第三者委員会報告によれば、総額1500億円以上の会計操作を行い、しかもそれは全社的に行われていたことがわかっています。

 

通常、ここまでのことをされていれば、監査人と被監査企業(東芝)との信頼関係はほとんど壊れているといっても良いでしょう。これほどの粉飾があれば、契約を解除するか、解除されるか、という問題になりそうなものです。
それにもかかわらず、新日本監査法人は、担当の会計士を増員して監査を継続するとコメントしています。

www.nikkei.com

なぜ、新日本は監査を継続することにしたのでしょうか?
確かに、リスクだけを考えれば、監査人を降りたほうが合理的に思えます。
新日本がそれでも東芝の監査人を続けるのは、東芝の監査人を降りることが、証券市場に与える影響があまりに大きいからだと私は考えています。
 
まず、このタイミングで新日本が東芝の監査人を退任した場合、どのようになるか考えてみましょう。
東芝のような大規模な会社の監査を行えるのは、他の大手監査法人トーマツ、あずさ、あらた)の3社のみです。
その3社が、同じ大手である「新日本監査法人が」「このタイミングで」手放したクライアントを拾うでしょうか。しかも、第三者委員会報告を読んだ限りでは、全社的に不正が行われていて、監査を引き受けるには、あまりにリスクが大きすぎます。
しかも、これだけの量の不正が行われていると、それだけ監査に係る工数が多くなり、適切な利益を確保するためにどの程度の監査報酬にするかの判断も難しいかと思います。想定以上にコストが膨らめば、巨大な「赤字クライアント」を抱えることになりかねません。
新日本が、このタイミングで監査契約を解除した場合、他の監査法人が後任を引き受ける可能性は極めて低いといえるでしょう。
 
仮に、新日本が途中で退任し、引き受け先がいなくなるとどうなるでしょう。
東証上場廃止基準には、このような文言があります。
監査報告書又は四半期レビュー報告書を添付した有価証券報告書又は四半期報告書を法定提出期限の経過後1か月以内に提出しない場合(有価証券報告書等の提出期限延長の承認を得た場合には、当該承認を得た期間の経過後8日目までに提出しない場合)
有価証券報告書が提出期限を大幅に遅れると、上場廃止というルールがあります。これには有価証券報告書公認会計士の署名入りの監査報告書が添付されることが必須となっています。
つまり、東芝が頑張って有価証券報告書を作成しても、これに監査法人の監査報告書がつかなければ上場廃止になってしまうのです。
ちなみに、実際に監査報告書を付した有価証券報告書を提出できずに上場廃止になった事例は実際にあります。
インスパイアーという会社は、粉飾をやりすぎて、もはや正しい数字が作れなくなったため、最後には監査人が逃げ出して上場廃止となりました。

www.fukeiki.com

今、新日本監査法人が監査人を退任すれば、監査意見を得ることができず、上場廃止になる恐れがあります。
東芝のような大企業が上場廃止になるのは、証券市場にとってあまりにもインパクトが大きすぎます。
新日本としては、来年の契約をどうするかは置いておいても、少なくとも今年の分の監査意見はだす。
それが最低限の責任だと考えているのでしょう。