Octopus's Garden

半歩先の生き方・働き方を考えるブログです。

監査法人業界の勢力図が変わろうとしている件

http://www.flickr.com/photos/11929105@N00/363908978

photo by noluck

東芝の監査を担当していた新日本監査法人に対する処分が年内にも出るようですね。

どうやら、監査法人に対する処分としては、初の課徴金が課されることになりそうです。それ以外にも、一定期間の業務停止とか新規受注の停止とかかなり厳しい処分が出るのではという噂もひろがっているようですね。
と、そんなことをかいている間にも、課徴金に加えて業務の新規受諾の停止なんていう話も出てきました。
 
新日本監査法人にどのような処分が出るかは、年内にはわかるようなので、その結果を待ちたいと思いますが、東芝の粉飾とそれに伴う新日本監査法人への行政処分によって、監査法人業界の勢力図は大きく変わってきそうです。

三大監査法人体制

中央青山監査法人の解散以来、業務収入の面では、日本の監査法人業界では、業界最大手は長い間、新日本が守ってきました。
少し古い情報ですが、「公認会計士ナビ」によると、2013年度時点で、業務収入で業界1位の新日本監査法人あずさ監査法人(以下、あずさ)、監査法人トーマツ(以下、トーマツ)の売上を比較すると、新日本が約930億円なのに対して、あずさ、トーマツはそれぞれ830億、820億円と100億円以上の差があり、1位の新日本とトーマツ・あずさではそれなりの差があることが分かります。

cpa-navi.com

 

中央青山監査法人(のちにみすず監査法人に改名。以下、中央青山)の解散前は、中央青山トーマツが業務収入で業界1位2位を競っていましたが、解散した中央青山のクライアントと職員の大半を新日本が引き受けたことから、2007年ころに新日本が業界最大手となりました。

その頃から現在にいたるまで、業界最大手は新日本で、その後をあずさ、トーマツが後を追うという勢力図は変わっていません。

監査法人業界の勢力図の変化の兆し

こうして、2007年から現在まで8年ほど変わることのなかった監査法人業界の勢力図が塗り替えられるようとしています。

予兆の一つ目として、東芝が監査人を新日本から他の監査法人に替えることを検討していることが挙げられます。

jp.wsj.com

 監査法人を替えたところで、監査の質があがるというものではないと思いますが、東芝としては、監査法人との「馴れ合い」のイメージを払拭し、社会からの信頼を回復するためには、監査法人の変更が必要と考えているのかもしれません。

東芝有価証券報告書を見ると、監査報酬はグループ全体で10億円ほど、東芝単体で5億円ほどです。あずさ、トーマツとの業務収入の差を考えると、東芝が大手2社のどちらかに移ったとしてもその差はまだまだ大きいとはいえ、差は大きく縮まることになります。

また、新日本監査法人にとって、大きな痛手となるのが、大手のメディアでもすでに報道されている新規業務の禁止という処分です。

監査人の交代というのは、毎年どこかしらの会社で行われていて、他の監査法人に契約を取られることもあれば、他の監査法人のクライアントだった会社から契約を奪うこともあり、新規の契約と失注とでバランスが取れてきたため、ここ8年間は業界内の勢力図が変わらなかったということが言えます。

新規業務受託の禁止期間がどの程度なのかはわかりませんが、この間は契約を失う一方なので、収入の減少が見込まれます。

新日本監査法人にとって大きなクライアントの一つである東芝との契約が他の監査法人に移り、新規の監査契約が禁止された場合、新日本監査法人は業界最大手から陥落し、あずさ監査法人またはトーマツが業界一位となる可能性がでてきます。

新日本監査法人分裂の可能性

今のところ、こういった動きはでていないようですが、新日本が提携しているグローバルな会計事務所による、あらたな監査法人の設立というのもそれなりに可能性があることと考えられます。
新日本監査法人はアーンスト&ヤングという世界でも最大手の会計事務所の一つのネットワークに加盟していますが、新日本監査法人に重い行政処分が下された場合には、アーンスト&ヤングとの提携関係に変化があってもおかしくはありません
新日本監査法人東芝担当のパートナーへの処分の内容次第では、このまま新日本とのメンバーファーム契約を続けることは、アーンスト&ヤングのブランドを損なうのではないかとアーンスト&ヤングが考えると可能性があるからです。
もちろん、その場合でもEYとしては、日本市場から完全に撤退することはありえないでしょうから、その時は、アーンスト&ヤング主導による新監査法人の設立の可能性が見えてきます。
中央青山解散の際には、中央青山と提携関係にあった、プライスウォーターハウスクーパース主導で、あらたな監査法人が設立され(現在のPwCあらた監査法人)、中央青山から主要なクライアントの半数近くを引き継ぎました。この辺りの経緯は、「監査難民」という本によくまとまっていますので、興味があれば読んでみてください。

監査難民 (講談社BIZ)

監査難民 (講談社BIZ)


今回もこのときと同様に、アーンスト&ヤングが日本にあらたに監査法人を設立するようなことになれば、新日本は分裂することになるでしょう。

 

新日本監査法人の退職者の増加

監査法人といのは、昔から、離職率の高い業界でしたが、ここ数年、インチャージまで経験した位の監査法人でそこそこ経験値を積んだ、若手の会計士の転職が増えてきているようです。
監査法人労働環境の悪化と、他業界での会計士のニーズの高まりが背景にあるようですIFRS適用企業の増加による経理人材のニーズの増加、ガバナンス強化のための内部統制や内部監査部門の増強ニーズなど)。
その中でも、ひときわ人材の流出が多いのが新日本だそうです。他業界だけでなく、新日本からあずさ、トーマツに転職する人も、多くはないですが、それなりの数がいるようです。
新日本は今、法人の運営として、非常に厳しい状況にありますので、早めに見切りをつけて他法人や他業界に転職しようという動きがあっても不思議ではありません。
監査法人の人手不足は、東芝の問題が発覚する前から言われていましたから、ここに来てさらに人材の流出が進んだということがあれば、新日本の経営はかなり苦しいものになってくるでしょう。監査法人のような労働集約型産業では、人材の質と量が売上に大きく影響しますからね。

まとめ

ということで、新日本が東芝の件で金融庁から受ける行政処分、メンバーファームであるアーンスト&ヤングの動き次第では、監査法人業界の勢力図が大きく変わりそうだなという話でした。
いずれにしろ、新日本が業界でダントツのトップ、という時代は終わってしまうんでしょうね。