Octopus's Garden

半歩先の生き方・働き方を考えるブログです。

原発と会計の不適切な関係

原子力発電と会計制度」という本を読みました。
原子力発電に関する会計制度という、非常に特殊で、かつ会計の論理というよりは政治の思惑で整備・運用されてきた会計制度の歴史を紐解いた書籍です。
 
一般にそれほど知られていないのかもしれませんが、電力会社など、一部の業種については、一般の製造業等に適用されている会計基準の他に、業種別の会計基準が設定されていて、そちらの会計基準が優先して適用されることになっています。
原子力発電に関する会計基準というのも、「電気事業会計」という特殊な会計基準に組み込まれたいくつかの省令から構成されています。
 
本書で紹介されているように、原子力事業に特有の会計処理である、「原子力発電工事償却準備引当金」「使用済燃料再処理引当金」「原子力発電施設解体引当金」等についてその創設の経緯やその後の運用についてその歴史を辿っていくと、原発に関する会計制度がいかに首尾一貫性のないものかということを痛感させられます。
 
そして、著者はこれらの会計制度を一通り説明した後、
本来であれば「電気事業会計を基礎とした電気料金算定」が行われるはずのところ、「電気料金を前提とした電気事業会計」が行われているという逆転現象が明確に現れている。
と批判します。
 
どういうことか言うと、電力会社の公共性を考えたときに、電気料金というのは、原価に適正な利益を載せたものを電気料金として国民から徴収すべき、そしてその原価を算定するのが電気事業会計、というのが本来の趣旨です。それが逆転してしまっている、電力会社の「こうしたい」という会計数値のための電力料金計算となっている(そこまで言っていませんが、言いたいことはそういうことだと思います)ということです。
 
例えば、廃炉にした原発については、投資の回収が見込まれない資産なので、本来ならば固定資産の減損に関する会計基準に準じて減損処理をすべきです。
ところが、廃炉に掛かる費用(廃炉資産の減価償却を含む)を「電気料金による回収」することにより「投資の回収が見込まれる」という、電気料金と会計の逆転現象が起きています。(これが許されるなら、
もはやなんでもありな世界で、電力会社というのは永遠に存続できてしまうのではないかと思えます)。
 
本書の内容を、会計に馴染みのない人にもわかりやすいように、噛み砕いて説明しようかななどとも思ったのですが、それはかなり骨の折れる作業になりそうなので、また次の機会に挑戦しようと思います。